研究概要・研究施設・装置の紹介

 私たちの研究室では、主として肝臓ストレスオプトジェネティクスというテーマを骨格として様々な研究を進めています。これらの柱となるテーマは、それぞれ独立したテーマに見えますが、個々の研究はすべて関係しあっています。

  • 肝臓に関する病態(主に肝へのストレスとストレス応答に関する研究)を、光を用いた生体イメージング法を用いて進めています。基本的に様々な急性・慢性ストレスの研究を主体としており、肝臓を中心とした具体的な病態として、虚血・再灌流、炎症、細胞増殖・成長・死、脂肪化、線維化、加齢などを研究しています。しかしながら、その先には癌、メタボリック症候群、肝炎・肝硬変、老化などがあり、肝へのストレスを起点として様々な病気・病態を系統的に研究することになります。
  • 光操作技術を利用して、組織内深部の細胞機能の制御を研究しています。自然界には光に対して感受性を有する分子がいくつか存在していますが、そういった分子の性質を利用して、様々な波長の光を利用して生体内深部の細胞機能の制御(細胞死の誘導、細胞生存能の向上)を試みています。深部損傷の再生促進、がんに対する光治療法の研究を進めています。

 研究代表者である尾崎は、保健科学研究院に所属していますが、研究の主体は次の研究部門・分野となります。「生体分子・機能イメージング部門」は、健康イノベーションセンター内に平成25年4月に設立されました。また、「生体応答制御医学分野」は、寄附分野として平成28年9月に開講しました。これらの組織が、メインとして進めるする研究はそれぞれにユニークなものですが、私たちの研究の大きな目標は同じところにあります。

 ストレスの研究に関しては、最近になり脳ストレスの研究を新たに始めています。現代社会において、私達は様々なストレスの存在下で生活せねばなりません。日常普通に行っている様々な行為、環境によってもストレスがかかっていますが、ストレスは必要なものでもあります。ストレスがなければヒトは生理学的な状態で生活していくことは困難です。非生理的状態にて生じるストレス(あるいは病的な状態に移行しないために生じるストレス)は、私達の体の恒常性(ホメオスターシス)を維持するのに重要な役割を果たしています。特に、脳(こころ)で感じるストレスは科学的解明が困難であり、今だ客観的に理解できてはいません。私達は、脳で感じるストレス(中枢神経、自律神経など)をより客観的に評価し、ストレスの強さ・部位・質を客観的に評価する試みを始めています。これは、先の生体応答制御医学分野において進めていく研究となります。

 様々なアプローチによりストレスを少しでも理論的・客観的に理解することで、ストレスの満ちたこの時代を「よりしなやかにかつ強く生きていく」ために何をすべきかを考えていきたいと思っています。

三つの大きな研究テーマ

1)ストレスに対する生体応答と適応におけるメカニズムの解析
 molecular mechanism of stress response and adaptation

2)様々な肝病態の分子生物学的解析と全身状態への影響(細胞・臓器機能と全身状態に関する包括的研究)
 liver physio-pathology and its systemic impact (a comprehensive study of cell/organ function and whole body conditions)

3)光分子操作技術を利用した生体機能・生体環境イメージング法と光療法の開発
 development of optic imaging technology of molecular function & cell/organ atmospheres and photo-molecular/cellular therapy

以下の研究組織と研究施設が基盤となって、これらの研究を進めています。

保健科学研究院 健康イノベーションセンター 生体分子・機能イメージング部門

 生体内環境・生体内分子機能の可視化技術の開発・応用を通して、広く保健医療に貢献する目的で、平成25年4月に、「生体分子・機能イメージング部門: Laboratory of Molecular and Functional Bio-Imaging (LMFBI)」を設けました。

 光イメージングの技術は生体における様々なイベントを非侵襲的・経時的に、かつダイナミックに解析することを可能にする技術であり、私達はこれまで生体内環境、生体内分子の可視化のため、既にいくつかの“光プローブ”を開発してきました。この技術の特徴のひとつは、従来型の主として形態情報を与える大型装置と比較して、装置が小型・安価であるばかりでなく、プローブに様々な細工を加えることにより、種々の分子の存在と機能、細胞・組織の環境・変化を生体というマクロのレベルでイメージすることが可能な点です。これは、生体内の様々なイベントを非侵襲的かつ継続的に観察できるということを意味しています。現在、生体・臓器・細胞の生命現象・生理・病態を医学・保健医学の観点から理解すべく研究をすすめています。学内・学外の研究者と分野横断的に進めることにより、臨床応用(特に、外科手術、内視鏡診断・治療)に向けたハード面での開発を並行して進めています。

 さらに、“光”を利用して、細胞内分子の機能制御あるいは体外から導入した素子の動態を制御することにより、糖尿病治療(予防)、臓器・生体機能調節、老化防止、癌治療などに役立てようと研究を進めています。

生体応答制御医学分野

平成28年9月に、「(寄附分野)生体応答制御医学分野: Department of Biological Response and Regulation」を設けました。私達は保健医療に従事するものとして、「日常における生体へのストレスとその克服」を研究のキーワードとして挙げています。不可避で持続するストレスに対する生体応答を科学的に理解し、ストレスに対して“強く”かつ“しなやかに”生きることを支援するため、少しでも社会に貢献したいと願っています。

ここでは、細胞から生体における様々なストレスを客観的に評価し、積極的に制御するための研究を進めています。また、ヒトを対象とした脳ストレスの研究を進めています。様々なストレスにより引き起こされる脳内の変化とその部位を系統的に解析し、客観的な脳ストレス評価を試みています。今後、“五感”によるストレス(緩和)への影響の研究も進める予定です。

同時に、ストレスと病気の発生・進行の機序から、その予防まで広く研究し、新たな保健医療の創出の一助として、また保健医療の研究・教育基盤を構築するためのプラットフォームとしても機能させたいと思います

研究室と主な解析装置

研究スペースは、保健科学研究院・研究棟(E棟)、医歯学総合研究棟6階および7階、創成研究機構生物機能分子研究開発プラットフォーム内にあり、それぞれ「生体分子・機能イメージング部門」、「生体応答制御医学分野」としての研究を行っています。保健科学研究院・研究棟(E棟)では、主として細胞実験による生化学・分子生物学的な研究を行っています。医歯学総合研究棟6階中央研究施設および同7階動物実験施設内では、動物実験を中心として研究をすすめています。創成研究機構生物機能分子研究開発プラットフォームでは、主としてGC-MASS 質量分析装置をつかった解析を行っています。

保健科学研究院・E棟4階 E407

プレートリーダー
ルミノイメージアナライザ(FUJI社製)
イメージアナライザー(ATTO社製)
RT-PCR装置
Kronos-Dio発光測定装置
Real-time Cell Analysis System
BZ-X810蛍光顕微鏡(Keyence社製)
レーザー近赤外光照射装置(カイルアサービス社製)
核酸自動抽出装置(QIAcube connect/QIAGEN社製)

医歯学総合研究棟5階 5-112

医歯学総合研究棟5階 ミーティング・ルーム(医歯学総合研究棟5階 5-112)

医歯学総合研究棟6階 6-105

医歯学総合研究棟6階 研究スペース(医歯学総合研究棟6階 6-105)

医歯学総合研究棟7階 共通動物実験室57-105-1

Bio-Spase社製小動物用生体イメージング装置