肥満・加齢と肝ストレス

 ところで、肥満・脂肪肝あるいは加齢においては、潜在的に臓器・細胞にストレスがかかっていると考えられますが、私達は外的ストレスに対して応答不全が起こることを報告してきました(J Gastroenterol Hepatol 2007, Laboratory Invest 2010他)。脂肪肝では、核内Wee1/Myt1リン酸化酵素の発現低下によりCdc2リン酸化が抑制され、細胞増殖能が遅延しました。さらに、外的ストレスに対する酸化ストレスの亢進・易傷害性を示しました。

加齢による肝への影響

 加齢状態では、加齢関連分子p66Shcによる細胞内酸化ストレス増加、抗アポトーシス能の低下により、ストレス応答性が低下することを示しました(Laboratory Investigation, 2010.)。

 更に、細胞増殖、細胞生存シグナル分子は、肝における糖・脂肪代謝をも調整していることが判明しました。特に、Jak/STAT3経路は、SREBP-1/FAS(Fatty Acid Synthase)を通して肝細胞内脂質合成を制御し、またPGC-1を介し、G-6-PC/PEPCKを制御することで糖代謝に影響していました。細胞内シグナル分子の直接的な糖・脂肪代謝への影響の証明は画期的であり、局所臓器に対するストレスとその応答が代謝能の変化を通して個体全体に影響していることを示唆しています(Nat Med 2004)。