芳香療法・医療はヨーロッパで「香りの医療」として定着していますが、日本はアロマテラピーとしてブーム的に広がり、「天然パワー」とか「皮膚炎に効く」「美肌になる」など「医療」という観点から違ったベクトルに向かい、しっかりとしたlogicの上で理解されていないのが現状です。本研究の大きな目的は『香りと医療の融合』で、『香りサプリメント』あるいは『医薬品としての香り』といった新たな分野の開拓です。
この技術の基礎になるものは鼻腔粘膜受容体を利用したドラッグデリバリーシステム(DDS)ですが、これにより脳磁図、fMRI等の高度医療機器を駆使しスクリーニングシステムを新規開発することで、“香り”を基本とした新たな保健医療・臨床医療の分野・領域を開拓したいと考えています。香りが脳にどのように作用し、その結果、生体がどのように反応するかが解明できれば様々なストレスに対する予防、認知症、感情のコントロール、睡眠障害、痛みのコントロールなどに利用可能であると考えています。
研究内容の概要
- 香料の科学的成分
1)香り成分の分離方法の開発
GCMSを用いて精油の各成分の分離方法を確立しています。
2)香りの主な成分の定量方法の検討
3)香の気化成分とオイル成分の違い
約80種類香料の気化成分とオイル中の成分の比較を行い、各香料の成分の違いを検討しています。
4)香料の安定性
5)香料成分の機能的絞込み - 小動物(ペット用犬)のストレス行動に対する香料の効果(酪農学園大学との共同研究)
- 香料と炎症(順天堂大学大学院医学研究科・神経難病治療開発講座との共同研究)
細胞を用い、「炎症」をターゲットに香料を機能別に分類を試みています。 - 香料と認知症
認知症診断のための香りの開発(資生堂化粧品開発センター・曽田香料との共同研究)
認知症モデルマウスを使った実験(順天堂大学大学院医学研究科・神経難病治療開発講座との共同研究) - 化学的または嗅覚的なフィンガープリントの作製(においの違いを数値化)